慣れること

毎日のヨガプラクティスが楽しくて仕方ありません。完全復活まではいきませんが、思うように身体を動かせなかった術後と比べてできることが1日1日増えていくのを実感するのは、この上なく楽しい時間です。

「いろいろ違和感はないの?」最近会った友達に聞かれました。(あ、こういう風にストレートに聞いてくれるの、とっても嬉しいです!どんどん聞いてください)

もちろんまだ違和感はいろいろなところで顔を出します。
でも、身体は慣れます。
それは、心が慣れるから。正しくは、慣れるしかないから。
こうなるしか仕方がなかったことに対して、抵抗の心を手放せば、
心が慣れ、心が慣れれば身体も慣れます。
(この場合、「もし●●じゃなければこうならなかったのに」という考え方はしません。「もしも」は物事をややこしくします。自分の選択を信じてシンプルに流れていきます)

そして時間がそれを手助けしてくれます。
できることが増えていくこと。
気にならない時間が増えていくこと。
なんだか赤ちゃんがどんどんできることが増えて楽しくて仕方ないような
そんな純粋な気持ちを感じられることが嬉しいです。

最も身体の可動域に影響があったのが、
大胸筋下にエキスパンダーを入れたため、大胸筋が影響する動作
●脇の下のセンチネルリンパ節生検による脇腹や脇下のひきつれ

今回は「センチネルリンパ節生検」について。

脇の下のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移があるかを調べるために、
リンパ節の手前にある(門番である)センチネルリンパ節に
まず転移がないかを調べるのがセンチネルリンパ節生検。

センチネルリンパ節に転移が確認されなければ、
腋窩のリンパを摘出する必要はないという理論です。
「センチネル」は「門番」という意味があり、
転移の門番だと考えるとイメージしやすいですね。
ただ、センチネルリンパ節生検をして腋窩リンパに
転移があると認められた場合はリンパ節の切除が必要です。
腋窩リンパ節を通って全身にがんが転移していくからです。

乳腺の主治医(ニックネーム:ブーブ(英語でおっぱい)先生)によると
事前に行っていたMRI検査で特に腋窩リンパの転移は見られなかったようなのですが、
それで「100%転移なし」と言い切れるわけではないため
手術中にセンチネルリンパ節を摘出してその場で調べて転移がなければ
腋窩リンパ節の摘出はしません、とのこと。

腋窩リンパ節を切除すると、リンパ浮腫(手術した側の腕や手のむくみ)が出たり
脇の下のしびれや感覚障害、肩の可動域が制限されるなど後遺症が出ることが多く、
不必要なリンパ節切除をなくすためにセンチネルリンパ節生検が役に立ちます。
(センチネルリンパ節生検でセンチネルリンパ節を切除しても
一般的には大きな後遺症はないです。
ただこれも「100%後遺症なし」とは言い切れず、個人差もあります)

手術前日(入院の日)の朝、センチネルリンパ生検の準備のために検査室へ。
特殊な色素を乳房に注射してセンチネルリンパ節の場所が特定できるようにし、
時間をおいて撮影をします。(レントゲンのような撮影)
その日はそれでおしまいで、翌日の手術まではリラックスして過ごします。
(病院によっては手術時に麻酔後この注射を行うこともあるみたいです)
そして手術中に全身麻酔がかかった状態でセンチネルリンパ節を取り出して
(わたしの場合、脇の下を3cmほど切開しました)
顕微鏡でその場で検査し、転移がなければ腋窩リンパ節は切除しません。

その注射がとっても痛いと調べてあったので、少し緊張……
でも、事前の針生検(ボールペンの芯くらいの針を乳房に刺して行う細胞検査)や
MRI検査(狭い筒状の空間でうつぶせで30分〜40分くらい動かず轟音にさらされる)
も耐えてきていたので、きっと大丈夫!と自分を信じて意外と冷静でした。

初めて体験することはどんなことでも緊張するし、恐怖を感じます
でも、いかに楽しめるか。今回はそんなことを意識しながらの毎日でした。
楽しむというと不謹慎に聞こえるかもしれませんが、
旦那さんと一緒に、よく話しながら、笑いながら、考えながら、時には泣きながら
ひとつの人生体験として前向きに臨むことができたから、
いろいろな違和感にも強く対応できてきたのだと思います。

さて、注射をしてくれる先生は手術着に身をくるんでいて目しか見えず、
最初誰だかよくわからなかったのですが、
「チクッとしますよ。中に液が入っていく時が少し痛いかもしれません」という声で
主治医のブーブ先生だということがわかった瞬間、
ググッと液が入っていき「いったーい!!!!!!!あはははは」
と笑いながら叫んでいました。
でもすぐ痛みに慣れて「あ、でも大丈夫かも」と発していました。
これも感じ方に個人差がありますので、あくまでもわたしの場合です。

ブーブ先生による針生検の時も、細胞を引っ張り出すときの
「バチーン」という音がすごくて、「わぁあああ!あははははは」と
笑ってしまって、笑っているうちに終わったので
主治医のことをいかに信頼できるかも、
心の状態を保つひとつの要因かもしれません。

まずは自分を信じ、自分の選択を信じ、関わっている人を信じること。

結局、センチネルリンパ節への転移はなく、腋窩リンパ節切除はありませんでした。
それでもセンチネルリンパ生検のために切開した脇の下の傷はまだはっきりわかるし
手術後はひきつれる感じがして、脇腹も感覚がおかしく、
脇を閉めて腕を脇腹につけようとすると、ゴルフボールくらいの何かを
脇の下で挟んでいるような違和感がしばらく続きました。
腕を動かすリハビリ(自分で行ったヨガ的な動き)を始めてから
脇の下が真っ赤に腫れて熱を持って慌てたこともありましたが、
無理しないよう,冷やすようにしたらスーッと赤みも熱も痛みもひいていきました。

今はほとんど違和感を感じない、というか、
違和感がNew Normalになってきたので、これがいまの自然な状態と思えます。
そして身体が治ろうとがんばってくれるのを実感します。
数週間前は背中の後ろで手を組むこともできず、
1週間前は手を組み合わせることができても手首を近づけることができなかったのに
今はしっかり組めて、手首どうしも引き寄せることができています。
毎日の練習に、身体はちゃんと応えてくれますね。

まだリンパ浮腫にならない保証もなく、数年後に発症する場合もあるため
手術側の腕では重いものを持たないように日常生活を注意しています。
肩の可動域がまだ完全に元通りでなかったり、
(まだ大胸筋がつながっている脇下のつっぱりがあるため)
腕に体重をかけるようなヨガポーズを避けていたりする以外は、
ほとんど日常生活に支障はありません。

なんだか怒濤の5月、6月の日々がもう昔のことのように感じます。